会長挨拶
第27回日本小児整形外科学会学術集会の開催にあたって

 この度、第27回日本小児整形外科学会学術集会を仙台国際センターで開催させて頂きます。光栄に思いますとともにその責任を強く感じております。

 日本の小児整形外科は少子化によりその対象が少なくなり、診療の場で様々な経験を積むことが難しくなりました。また日本整形外科学会が計画している新しい整形外科専門医研修プログラムは、全国における各分野の症例数をもとに研修すべき期間を決めているため、専攻医の間に小児整形外科を研修する期間は45ヵ月中の2ヵ月と、腫瘍と並んで最も短く、また経験すべき症例のかなりの部分がe-learningで良い事になっています。この事は小児整形外科領域を充分理解できていない専門医が出来上がる危惧だけではなく、専攻医が小児整形外科を志す機会が少なく、小児整形外科医の減少につながる心配があります。

 小児整形外科の発展を考えるとき、良い専門研修プログラムは必要ですが、何よりも我が国の小児整形外科の診療と研究が発展し、それが高いレベルであると国際的に評価されることが必要と思います。そのためには学術集会や地域毎、分野毎の研究会で多くのテーマについて深いdiscussionをする必要があります。小児では病因・病態を知り、それに応じた診療を行うのは難しい事もありますが、やはりそこを目指して進むべきと思います。

 また、小児整形外科の発展には世界の様々な地域の小児整形外科医と交流し、小児整形外科の進歩と広がりを知る必要もあります。私は1998年にマドリードで開かれた第1回 International Federation of Paediatric Orthopaedic Societies IFPOSに参加したとき、スペイン国立小児病院を見学に行き、偶然にも欧米の内反足の専門家が集まるclosed meetingの場に入り込みました。そこで行われているdiscussionを聞き、この中に入らなければ井の中の蛙になると思いました。また、2000年に北米小児整形外科学会に参加したとき、Ponseti先生が学会場前で、ビデオとパンフレットでPonseti techniqueを解説しているのを見てその実際を知りました。私は留学の経験がなく、より積極的になったのかも知れませんが、諸外国の人々の意見を聞くべきと思っています。さらに日々これで良いのか、もっと進歩と向上をめざさなければと考える必要があります。

 今回も前年の演題数を上回り、本学会が活気のある学会になっているものと嬉しく思います。頂いた演題のテーマは多方面にわたり、力作も多く、発表とdiscussionを大いに期待しておりますが、是非、発表後に論文として投稿いただきたいと思います。今回は口演のスライドは英語でお願いしております。海外からの参加者に内容を理解して頂くとともに、海外の施設を訪問したときや海外のドクターの訪問を受けた時に役に立つものと思います。

 3人の海外招待講演者の講演や、教育研修講演、明日の小児整形外科セミナー、シンポジウム、パネルデイスカッション、主題、一般演題、ポスタ―、ハンズオンセミナーと多くの企画をしておりますが、皆さんの討論が何より進歩につながると思います。活発な討論をお願いいたします。本学術集会が小児整形外科のbreakthroughとなりますよう願っております。

 最後に、討論の後は懇親会で、また仙台の街で東北の銘酒と秋冬の食材を楽しんで頂ければと思います。

第27回日本小児整形外科学会学術集会
会長 北 純
(仙台赤十字病院 副院長)